クリーンルーム解除~大部屋生活~



やっぱりここが現実なんだ……

朝、目覚めるといつもそう思っていた。


近医を受診してから怒涛の日々。

クリーンルームにいることが、どこか夢の中の出来事のようで、目が覚めたら、自分の家に戻っているんじゃないかと、そんなことばかり考えていた。


過酷な現実が受け入れられなくて、ここにずっと入っていたら、精神的におかしくなりそう。

もうずっと出られなくなるんじゃないかと、不安と恐怖に襲われる。


もうストレスが限界に達していた。

クリーンルームも2週間以上経過し、体も回復してくると、窓からは空も地上も見えない
殺風景な景色で、閉鎖された空間にいることが、精神的に苦痛になってきた。

ストレスから胃痛がひどく、食べられない。

胃痛、下痢、不正出血、目の上の吹き出物の炎症。

WBC  1800
好中球 648
Hb      7.3
PLT     5.5
CRP    1.6
(Day 15)


2回目の骨髄穿刺(マルク)をした。

前回の時のことを思い出し、すごく緊張していた。

「痛いかな…ナーバスになってる」と話すと、
同い年の優しい看護師さんが、処置の間、手を握ってくれて、声をかけて励ましてくれた。


クリーンルーム、17日目の夜。

ようやくクリーン解除となり、クリーンから出ていいと言われ、シャワー室に行っていいと許可が出た。


わーい嬉しい!
シャワーできる!
自由に動ける!
院内のコンビニに行ける!


クリーンからようやく出られて、初めて自分が入っていた病棟は、こんな世界だったんだとわかった。

改めてクリーンのすごく狭い世界に、閉じ込められていたんだと思った。


救急車のストレッチャーで運ばれ転院し、クリーンルームに直行したあの日。

何がなんだか、よくわからない状態だったので、家族や看護師さんに、病棟の様子を聞いていた。

ようやく念願のクリーン解除になり、看護師さんにフロアを案内してもらった。


シャワー室、食堂、デイルーム、ナースステーション。

こんな風になっていたんだと、違う世界に来たような、不思議な感覚だった。


フロアをほんの数メートル歩いただけで、すごくしんどくて息切れがした。

ずっとベッドの上でいると、こんなに体力、筋肉が落ちるんだと驚いた。


翌日、クリーンルームから大部屋へ引っ越しした。

最初は、話し声、人の温度を感じる安心感、孤独なクリーンから、大部屋になって嬉しかった。

だけど、喜びも束の間、大部屋での苦痛、トラブルもあった。

プライバシー、ケータイ禁止、脱毛のこと。

慣れない環境、人間関係で、すごくストレスを感じた。


まだ抗がん剤治療の影響や、貧血、クリーンルームの心身のダメージから回復していなくて、一人でゆっくり休みたいと、昼間ベッドのカーテンを閉めて寝ていると

「部屋が暗くなるからカーテン閉めないで!」

「この部屋では昼間カーテン閉めるの禁止なの」

と同部屋のおばさんに言われ、勝手にカーテンを開けられた。


断りもなく勝手にカーテンを開けられて、すごいムカついた。

おばさんたちは、朝からずっとおしゃべりで、うるさくてゆっくり休めない。

病院はおしゃべりするところではなくて、病気を治すための場所なのに!


しんどさと怒りで我慢できずに、姉御肌の看護師さんに相談した。

いつも私のことを「ray*ちゃん」「姫」と呼んで、精神的に引き上げて、元気なパワーをもらえる人。

入院初日に担当で、コンビニに買い物してきてくれたり、とても頼りになる人だった。


看護師さんは
「カーテンを閉めてはいけないなんて決まりはない」

「病気なんだからゆっくり休むのが大事」

と言ってすぐに行動してくれた。


同部屋の人に
「治療中でゆっくり休みたい患者さんもいるから」と話してくれた。

ちょうど退院する人がいて、配置を変えたりして、ベッドを囲うカーテンを閉めて休ませてくれた。


初めての入院で、初めて他の患者さんと接することになって、入院生活で他者とどうやって付き合っていけばいいか、分からずに困惑していた。


血液疾患以外の患者さんもいる病棟。

同年代の女の子も病棟にはいなくて、色々と話せそうな人はいなかった。

性別、年齢、病名、それぞれの立場で違うと思った。


「あなたは若いから体力があるからいいよ。わたしらは大変だ」

と同部屋のおばさんに言われたけど、私は反対だと思った。


若ければ若いほどやっぱり大変だ。

私は社会人だから、半年間の入院でも、まだなんとかなるけれど、学生の人にとっては、半年、一年間の入院は、社会人よりもとても大きな期間に思う。


私の20代の年齢でも、周りとのギャップですごく孤独に思えた。

みんなは仕事、恋愛、結婚、出産、育児、人生を謳歌している。

白血病で入院している自分とは、全く別世界に感じていた。


病気の経験や、悩みを抱えている人も少ない。

もし学生だったら、もっと大変な思いをしていると思った。

留年したり、受験や進路、将来の夢、否応なく影響がある。

周囲との生活、価値観のギャップで孤独を感じる。

年齢が若ければ若いほど、その後の人生の影響が大きいと思っていた。


だから年上の患者さんたちに、「若いからいいよね」と軽々しく言われるのが、すごく不愉快だった。


いいことなんてない!

体力的には元気かもしれないけど、心も体も大きな傷を抱えて生きていくことになる。

仕事、恋愛、結婚、出産など、その後の人生に与える影響、困難が大きいと思う。


夜、退屈と寂しさで、布団の中で携帯メールをしていると、カーテンで見えないはずの同部屋の人が、看護師さんに言ったようで注意された。


朝には「また髪の毛落ちてるわ」と、誰かが脱毛のことを言っている声が聞こえてくる。


ストレス、イライラがMAX。

こんなに辛いときに、部屋での携帯メール禁止なんておかしいよ!

偉そうに注意してくる看護師さんも、自分が同じ立場なら携帯も禁止で、長い入院生活を乗り越えられるの?


もう嫌だよこんなところ。
犬に逢いたい。
早く家に帰りたい。


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