卵巣嚢腫茎捻転~緊急手術~



下腹部に痛みと違和感を感じた――

白血病治療から退院して、2ヶ月後の2004年5月。

下腹部の痛みが気になって、病院で検査をしたら、左の卵巣嚢腫があることがわかった。


以前から不正出血があって、生理痛もひどかった。

白血病入院中に看護師さんから、
「一度婦人科で診てもらった方がいいよ」と言われていた。

退院したばかりで、ホッとしていたところに
まさか卵巣の病気が発覚するなんて、思いもよらず、大きなショックを受けた。


婦人科のドクターに、捻じれたら大変だからと、手術を勧められたけれど、まだ白血病の入院治療が終わったばかりの病み上がりで、入院のトラウマもあるために、できれば手術はしたくないと躊躇していた。


ハンマーで殴られたような、ショックでフラフラになり、なんでこんなに大きな試練が、次々襲ってくるのか、自分の運命を恨みたくなった。

生きていても、病気にばかりなるなら、いっそこのまま死んだ方がましかもと、暗い気持ちになった。


検査結果を聞いた翌日、その時は突然やってきた。

下腹部の強い痛み、吐き気がして、もうこれはダメだと、検査をしてもらった近くの総合病院へ行くと、「茎捻転だから、すぐに手術をしないといけない」と言われ、緊急手術となった。


白血病の加療中患者ということで、婦人科のドクターが血液内科の主治医のDr.に連絡をとって、手術をしても大丈夫か確認をとってくれた。

本当は向こうの病院の方がいいけど、緊急性と、ちょうど婦人科のドクターが揃っているからと、そのまま即手術をしてもらうことになった。

家族に連絡して、母親が来てくれた。


腫瘍の大きさが、7.5cmにもなっていて、開腹手術のため半身麻酔をした。

生まれて初めての手術台。

半身麻酔で意識はあるので、すごく怖かった。


無事に手術は終わり、腫瘍は良性で、嚢腫の部分だけとって、残してくれた。

ずっと下腹部に痛み、違和感があって気持ち悪かったので、手術は怖かったけど、無事に終わってホッとした。


縫った傷口が痛い…

体にメスを入れるって、こんなに辛くて痛いんだとわかった。


白血病の抗がん剤治療の時は、手術で腫瘍をとれる病気は、すぐに退院できるから、そっちの方が血液疾患の治療よりいいかなと思っていた。

だけど、部分麻酔をして手術されるのは、本当に恐ろしかったし、その後も傷口が痛くて大変だと思った。

どちらも怖いし辛いし、大変なんだと。

精神的ダメージは大きかった。


手術当日の夜、ずっと心配だった、クリーンルームのトラウマが襲ってきた。

消灯時間になり、大部屋でカーテンに囲まれて、ベッドで寝ていると、突然パニック発作が起こった。


苦しくなって、ナースコールで看護師さんに来てもらい、ナースステーションにベッドごと移動されて、明るいナースステーションで一晩過ごした。


そばに看護師さんがいて安心だけど、なんかこんなことになって悪いなと、申し訳ない気持ちになった。

薬を飲んでも眠れなかった。


翌朝、自分の病室に戻った。

買ってきてくれて、入れておいたはずのTVカードがなぜか無くなっていた。

なんとなく、怪しいなと思う同部屋の女の人がいた。

もう入院は本当に嫌だ!


不安神経症状が強く、予定より早く退院させてもらった。

退院してから、どん底の気分。

自分は不幸の元に生まれたんじゃないかと、運命を恨んだ。


もう病気もがんも、手術も入院も二度としたくない!

病気にならずに健康に生きられるようになりたいよ!

なんで私ばかりこんな病気に次々になるの?

家族は皆、大病などしていなくて健康なのに…

同じ環境、食生活なのに、なんで私だけ病気になるの?


一体何がいけないのか?

その原因を心底知りたいと思った。

病気になる人とならない人、何が違うのか?

今までの生き方を、根本的に変えないと、また病気になってしまうんじゃないかと怖くなった。


白血病退院から、まだ心身共に立ち直っていない、わずか2ヶ月後に卵巣嚢腫の手術・・・

病気のショックと恐怖心で、おかしくなりそうなくらい落ち込んでいた。


母親からは
「あんたみたいな子は、次から次へと病気になるわ!」

「ばちが当たったんだ」

心ない言葉をぶつけられた。

「もう死にたいくらい辛いんだから!」と私が言うと

「死にたかったら勝手に死ねばいい!」

「そう簡単には死なれへんわ!」

とヒステリックに返された。


母親に話しかけられただけで、脈拍が異常に速くなる。

心臓が痛くて、呼吸が苦しい。

自宅にいても、心が休まらなくて、常に緊張感、恐怖心、絶望感の中にいた。


病気になった人は悪い人で、病気にならない人がいい人なの?

絶対おかしいよ!

少なくとも、白血病を患い、手術までした私に、そんな言葉を平気で投げ付けてくる人が、いい人なんて絶対に違う。

人を平気で傷つけられる人の方が、病気にならず、健康でいられるの?

私は何も悪いことなんてしていないのに、なんで大病を患ったの?

この世は一体、どういう仕組みになっているんだろう?


もう何もかも嫌になった。

何のために生きているのか、わからなくなった。

生きることがこんなに辛いなら、死んだ方がましだ。

自分をギリギリ支えていた何かが、ガラガラと崩れていった。


もう終わりだと思った。

人生終わりにしたいと。

この世で生きていくのは、あまりにしんどすぎて、疲れてしまった。


どうやったら楽になれるのか。

あっちの世界に行けるのか。

そんなことを考えていた。


浮かんでくるのは、必死に自分を治療し、
いつも笑顔で優しく支えてくれた、Dr.や看護師さんのこと。

Dr.に会いたいよ。

今、自分が生きているのは、Dr.たちのおかげ。

その恩人の人たちを、裏切る行為になってしまう。

でももう、生きる意味がわからないよ…


絶望感の中にいると、突然、携帯電話が鳴った。


白血病の主治医のDr.からだった。


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