エピローグ~桜の時~
大好きな桜の季節がきた。 白血病退院から4年経った2008年の春。 定期検査の日がきた。 病院へ向かう道中、感慨深い気持ちでいた。 まだ4年で完治とは呼べないのかもしれないけれど、自分の中ではもう絶対大丈夫と信じていた。 出会いと別れ。 卒業、入学、新生活。 植物たちが色とりどりに芽吹いてくる、この季節が好きだ。 毎年桜の季節になると思い出す。 2004年白血病退院した日のこと。 綺麗な桜吹雪を見たこと。 緊急入院、転院、告知、怒涛の闘病生活。 そしてDr.との日々を思い返していた******** 「ray*さんが入院した日のことは、よく覚えている」 「入院した頃、精神的にすごく不安定で一人ぼっちに見えた」 「たいがいの患者さんには献身的に支えてくれる人がいて、医者の役割は限られているけれど、ほとんど支えてくれる人がいないように見えた」 「だから自分が何とかしてあげなければと思った」 「必要としてくれる人がいるなら、頑張ろうと乗り越えられた」 「ray*さんと、とりとめのない話ができる時間はすごく癒された」 「あの時期、ray*さんが生きるための意味であり救いだった」 「論文のリプリントを渡した時、この人にもらってもらえるなら、研究への想いも諦められると思った」 入院中の私は、絶望と恐怖のどん底にいた。 孤独で絶対的な希望もなくて、でも死ぬのも怖くて、闘う勇気もなくて、どこにも逃げ場がなくて、どうしていいかわからない状態だった。 でもDr.や看護師さんがすごく優しくしてくれて、一生懸命励ましてくれて、自分のためにすごく熱心にやってくれている姿を見て感動した。 自分のためにこんなに頑張ってやってくれている人がいるのなら、私はこの人たちの力を借りて、頑張って乗り越えられるかも。 この人たちの力を無駄にしたくない。 頑張っていこうと思えた。 そしてDr.がかけてくれた言葉 「代わってあげたいけど、代わってあげられない」 この言葉を聞いた時、氷のように冷たくなっていた私のハートが、じんわり温かくなっていった。 こんなに優しい言葉をかけてくれる先生がいるなら頑張れる。 この人と出会えて良かった。 頑張って退院して、元気にな